開業する前には、こんな事もしていました。
◎1985-1990年のお話。
神田商会在職時代です。アフターサービス部門に属していました。一流海外アンプ(Ampeg, CRATE, GALLIEN-KRUGER, LANEY, Music Man, RIVERA, SUNN, TRACE ELLIOT)の国内総輸入元として取り扱う商品と、FENDER JAPANやMAXON(当時は神田商会がサービス窓口でした)を中心に、広範囲かつ膨大な量の商品を修理しました。数多くの海外メーカーとの係わりは、今日の修理や商品開発に大いに役立っています。それらは、なかなか体験する事の出来ない、大変に貴重な経験でした。
また時代はバブル期でも有り多忙な中、修理だけに留まらず数々の商品開発は、FENDER JAPAN、日伸音波製作所、富士弦楽器製造(現フジゲン)や韓国KIMANSONなどとの係わりまでに広がりました。
他には、GRECOモニターのプロミュージシャン、PRINCESS PRINCESS、DEAD ENDやKILLER MAYなどの機材改造も行いました。
○アンプ
・FENDER Japan MA-10
初めて仕事でアンプの音作りをした、思い出のミニ・アンプです。当時はまだ、音が出ます程度の物が多く、これのサンプル品も例外ではありませんでした。おもちゃのアンプですが、部品の定数を変更して、ギターアンプらしい音に仕上げました。爆発的ヒットとなり、世界に向けて沢山売れました。
・WASHBURN LVG-10
前作のMA-10では、部品の定数変更という限られた手法での音作りでしたので、おもちゃとは言え、まだ音を良くする余地がありました。このミニ・アンプでは、ハードロックを演奏する事にこだわって、回路を新規に設計しました。前作ヒットのおかげです。(笑)
販売は国内でしたが、評判が良くこれも沢山売れました。後に中身はそのままに姿を変えて、英国の某メーカーのミニ・アンプに化けたようです。私には一銭も入りませんでしたが。(泣)
・FENDER Japan SQUIERシリーズとWASHBURN Live シリーズ
二つのシリーズの生産が、韓国で本格的に始まりました。低価格路線まっしぐらです。
この時期の少し前から、技術面の師匠・林芳明氏(現:林クラフト)とご一緒に仕事をさせて頂くようになりました。 低価格とは言え、音にはこだわり、手は抜きませんでした。師匠に御同行頂き、韓国のスピーカー製造工場へ行き、専用の物を開発しました。これにより、他社の韓国製アンプとは一線を画す物となりました。
後にはデザインを変えて、他のメーカーや楽器店オリジナルとしても生産されるようになりました。
・FENDER Japan FAT シリーズ
1980年代は、真空管の供給が衰退する一方でした。そのような中で、念願の真空管アンプの音のデザインを担当する事が出来ました。ヘビィメタル全盛の時代に、今で言うクランチなサウンドにこだわりました。 従来からのフェンダーらしいクリーンな音色とマーシャルのようにギターの低音弦が潰れない心地良いアンプらしい歪を目指し、回路の構成は私が決め、全体の回路と実装を設計したのは、元エルク電子のエンジニアです。
スピーカーはフェンダーUSAに習って、エミネンスを採用しました。本当はセレッションにしたかったのですが、当時の諸事情により他に選択肢はありませんでした。
反省点はブライト・スイッチの効果を、TWIN REVERBに比べて控えめにしたため、効きが悪いと言うご指摘を頂きました。万人向けにデザインするのは、難しいと思いました。
高価なスピーカーの採用と国内生産という事もあり、高額なアンプとなりました。在庫を売り切るのには、長い年月が掛かったようです。
昨今、オークションでは比較的高値で落札されているようで、気に入って下さる方が未だにいらっしゃるようで、うれしく思います。
○ベース・ギター内蔵サーキット
・GRECO PJB
このころ、ベースアンプで流行っていました、いわゆる"ドンシャリ"サウンドを、9V電池での動作に最適化してベースに内蔵しました。
後継モデルにあたるPXB(フェニックス・ベース)にも使われました。
・GRECO JJB
当時は、韓国生産の小型アンプが沢山売れました。小型アンプでも十分な低音が楽しめるように、比較的ポイントでの低音ブースを取り入れ、TREBLEとBASSを独立して設計しました。また、大型アンプでも本格的に使えるように、ピックアップも専用の物が開発されました。
コントロールの構成は、Pickup Balancer、Treble、Bass、Master Volumeです。
プロのミュージシャンが使用するには、強力過ぎる低音ブーストでしたので、実はモニターのミュージシャンへは、個別にブーストの量を調整していました。
・FENDER Japan PBAC
ピエゾ・ピックアップと言うと、どうしても音が硬くて"キンキン"した、それらしく無い音です。サンプル品もそうでした。師匠にアドバイスを頂き、回路に手を入れました。低音が鳴り、出来るだけ豊かなサウンドになるよう仕上げました。
MA-10 & LVG-10